SaaSとインストール型ソフトの違いは、
料金や仕組み以上に現場での「使い方そのもの」に表れます。
ただ、仕組みを知っていても、
日常的に使うサービスの中で何がどう変わったのかは、
意外と実感しにくいものです。
この記事では、
チャット・デザイン・オフィスといった代表的な分野を例に、
SaaS型サービスと従来のインストール型ソフトを比較しながら、
実際の変化を具体的に見ていきます。
チャットツールの違い

多くの人が日常的に使っているSlackやChatwork、
そして企業で広く導入されているMicrosoft Teams、
趣味やコミュニティで利用されることの多いDiscordも、
実はすべて典型的なSaaS型チャットツールです。
ソフトを購入して使っている感覚はなくても、
仕組みとしては「インターネット上のサービスを継続的に利用している」形になります。
まずは、従来のインストール型チャットソフトから見ていきましょう。
従来のインストール型チャットツール
以前は、社内サーバーにソフトを導入し、
各PCにインストールして使うチャットシステムが主流でした。
- ソフトを買い切り、またはライセンスを購入して導入
- データは社内サーバーや各端末に保存
- 機能追加や不具合修正は手動アップデート
- サーバー管理や保守が必要
導入後も運用コストと管理作業が発生し続けるのが特徴です。
人数が増えればサーバー増設が必要になり、
バージョン管理やトラブル対応も社内で行う必要がありました。
SaaS型チャットツール
Microsoft Teams・Slack・Chatwork・Discord、
これらのサービスは、ブラウザやアプリからログインするだけで利用できます。
- ソフトを購入する必要はない
- 月額課金、または無料+追加機能課金モデル
- メッセージやファイルはクラウド上に保存
- 機能追加や改善は自動で反映される
ユーザーは環境を整えなくても、
常に最新版のチャットツールを使い続けられる仕組みです。
チーム規模が変わってもすぐに人数を増減でき、
データ管理やアップデートを意識する必要もほとんどありません。
この違いが生み出した大きな変化
SaaS型チャットツールの登場によって、
企業や個人が自前でシステムを用意する場面は大きく減りました。
- 使いたいときにすぐ使える
- 規模の変化に柔軟に対応できる
- 運用や管理をサービス側に任せられる
こうした環境は、今では特別なものではありません。
今、何気なく使っているSlackやDiscordは、
単なる「便利なチャットアプリ」というより、
SaaS化された業務環境の一部として機能しています。
そして近年は、
チャットツール上でAIを補助的に使うケースも増えつつあります。
情報整理や文章作成など、業務の一部を支援する存在としてです。
デザインソフトの違い

従来の買い切り型デザインソフト
次はデザイン分野です。
かつてPhotoshopやIllustratorは、
ソフトを購入してPCにインストールする「買い切り型」が主流でした。
一度購入すれば使い続けられる一方で、
- 新機能を使うには、次のメジャーバージョン(CS◯など)を購入する必要があった
- PCを変えると再インストールやライセンス管理が必要
- データ管理や環境構築は基本的に自己責任
といった前提がありました。
サブスクリプション型デザインソフト
現在主流となっているサブスクリプション型デザインソフト(Adobe Creative Cloud)は、
こうした形とは大きく異なります。
- 月額/年額課金で利用
- 常に最新版が使える
- 複数デバイスで同じ環境にログイン可能
- データや設定をクラウドと連携できる
ユーザーは「ソフトを所有する」というより、
制作環境そのものを利用している感覚に近づいています。
この違いが生み出した変化
この変化によって、
- 個人でも始めやすくなった
- チームでの共有や引き継ぎが容易になった
- ツールの管理負担が大きく減った
といった実務面での違いが生まれています。
一方で、月額・年額で支払いが続くため、
個人や小規模チームにとっては費用が負担になるケースもあります。
オフィスツールの違い

従来型オフィスソフト
WordやExcelといえば、
以前はPCにインストールして使うのが当たり前でした。
この場合の前提は、
- ソフトは特定のPCにインストールして使う
- ファイルは基本的にPC内、または社内サーバーに保存
- 共同作業はメール添付やファイル共有が前提
- どの版が最新かは人が管理する
といったものです。
個人作業を中心に設計されており、
複数人で使う場合は「運用でカバーする」必要がありました。
SaaS型オフィスソフト
一方、Google WorkspaceのようなSaaS型オフィスでは、
そもそもの前提が異なります。
- ブラウザからすぐ利用できる
- ファイルはクラウド上に保存される
- 複数人での同時編集が前提
- 変更履歴や権限管理が自動で行われる
ソフトを「開いて作業する」より先に、
共有・共同作業が前提になっている点が大きな違いです。
この違いが生み出した変化
SaaS型オフィスソフトの普及によって、
オフィス作業は「個人で作って渡す」ものから、
「最初から共有して進める」ものへと変わりました。
ファイル管理や版の把握を人が意識する必要が減り、
場所や端末に縛られずに作業できる環境が整った点も、
従来型との大きな違いと言えます。
インストール型からSaaSへ「使われ方」はどう変わったか
ここまで、
チャット・デザイン・オフィスといった具体例を通して、
インストール型ソフトからSaaSへ移行したことで
現場の使われ方がどう変わったのかを見てきました。
ツールの種類は違っても、
実際に起きている変化には、いくつかの共通点があります。
それを整理すると、
インストール型ソフトとSaaSの違いは
次のようにまとめることができます。
| 項目 | SaaS(クラウド型) | 従来のインストール型 |
| 利用環境 | ブラウザ中心・場所を選ばない | 特定のPC・環境に依存 |
| 保存場所 | クラウドに自動保存 | ローカル保存が基本 |
| 共同作業 | リアルタイムで同時編集 | 原則は個別作業 |
| 情報共有 | 常に最新版が共有される | ファイル受け渡しが必要 |
| 更新・改善 | 自動で反映される | 手動アップデート |
まとめ
本記事では、
チャット、デザイン、オフィスといった身近な分野を例に、
SaaS型サービスと従来のインストール型ソフトの違いを見てきました。
共通して言えるのは、
「ソフトを所有して使う」形から、
必要な機能や環境をサービスとして利用する形へと、
前提そのものが変わっている点です。
その結果、
導入や管理の手間は減り、
場所や端末に縛られない使い方が当たり前になりました。
一方で、継続的な費用が発生するという側面もあります。
なお、こうしたSaaS型サービスは、
登場からすでに10年以上が経過しています。
なお、近年はこうしたSaaS型サービスに
AI機能が組み込まれることで、
ツールの役割そのものが変わり始めています。
この変化については、別の機会にあらためて整理してみたいところです。

